純情エゴイスト

□心と体
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浮上し始めた意識は、が掛かったようにぼんやりしている。

だが、そんな中でも甘い痺れははっきりと分かった。

全身を駆け巡る快感に逆らう術など考えようがなかった。

時間感覚もなく、目を覚ました時にはただ身体が熱くてアツくてどうしようも出来なかった。

ただ、相手を認識するよりも先に与えられる快感に縋るしかなかった。

苦しい…刺すような快感が、触られる度に火傷したようで、「気持ちいい」が辛かった。


弘樹にとって拷問のような時間は、実際には三日という期間であった。

弘樹を誘拐した真貴は、気を失い静かに呼吸を繰り返す弘樹に媚薬を嗅がせ、その身体をただ蹂躙した。

三日間快感のみを与え、媚薬を使って正気に戻らないようにしていた。

三日経ち、真貴は媚薬の使用を徐々に減らしていき、弘樹の意識を戻させた。

弘樹が正気に戻った頃、もちろん真貴はまだ弘樹の身体に嵌めたままであり、嫌がる弘樹をそのまま犯し白濁で汚した。

元々中に出された分も含め、真貴が性器を抜くと、溢れる白濁に弘樹は零れそうになる涙を必死で堪えていた。

己の痴態にか、現状にか、肩を震わせる弘樹に真貴は煙草をふかしながらに告げる。

「これから、俺以外の名前を口にする事は許さねぇ。」

思わず顔を上げ真貴を見つめると、どこか苛ただしげにこちらを射抜く視線とぶつかる。

弘樹は正気を失っていて知らないが、真貴が蹂躙している間に喘ぎと拒否の言葉以外に無意識に口にしていたのは「野分」という名前だった。

だが、真貴がその事実を口にする事はない。

「なに、ふざけた事、いってんだ。」

久しぶりに自分の意思で出した声は、酷く掠れ小さかった。

「ふざけてなんかいないぜ。M大文学部助教授上條先生。これでも裏のトップ張ってんだ。これがどういう事か、賢い先生ならわかるよな?」

思わず無言になった弘樹だが、ぼやける頭を必死に動かしその意味を理解しようとした。

(つまり、こいつは自分が組長をしているとでもいいたいのか?)

霞む頭でも自分がとても厄介な状態にある事は、なんとなく分かった。

「なにが目的だ。」

組長だろうが何だろうが、弘樹には今更態度を変える気はない。

「目的って程じゃねーが、お前が欲しいだけだ。」

「俺が…?」

言われた言葉に思わず聞き返してしまう。

「そうだ、お前が欲しい。」

(こいつは、なにを…言っている?)

「訳が分からない。」

「意味など無い。お前は黙って俺の物になればいい。」

あまりに傲慢な言いように、弘樹は思わず怒鳴り返していた。

「馬鹿にするのもたいがいにしろ!!誰がてめぇの物になるかッ!これは、立派な犯罪だ!てめぇなんか警察に突き出してやる」

弘樹の顔に煙草の煙をふかし、なにが可笑しいのか笑い始める。

「ククク…、弘樹、お前は俺の言っている意味を正しく理解出来ていないみたいだな。俺をただのヤクザのトップだと思ったら大間違いだぜ。俺は裏のトップって言ったんだ。俺の一言で政界も司法も正義も全てを動かすことが出来る。たった一つの財団を潰すことも、何千の学生を露頭に迷わせる事も、職を奪う事も、どんな事も俺の一言で全て可能だ。たった一人の人間の失踪を隠蔽する事なんか朝飯前だ。これで、自分の立場が分かったな?」

弘樹は唖然として真貴を見つめるだけで言葉を発することは出来なかった。

ただ、無意識のうちに呟いていた。

「なんで、俺なんだ?」

(なんで・・・)
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